華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
8─福禄─

待ち望んだ一日


高い天井、細長い窓とステンドグラスから差し込む優しい光、身体に響くパイプオルガンの音色。

厳かで美しい大きな教会の中、白いウェディングドレスに身を包み薄いヴェールで髪を覆った私は、正装をしたフレイヴの隣で司祭の言葉を聞いていた。

婚約をしてから約二か月後の今日、クラマインの教会で結婚式が行われている。

結婚式には当然憧れていたけれど、人前に出ることにいまだに慣れていない私にとって、多くの人々に見守られながらの儀式は尋常じゃないほど緊張する。

固い表情で主祭壇を見上げていると、フレイヴがわずかに顔を近づけてこそっと囁く。


「ワルツを踊ったとき以上にカチカチだぞ」

「……しょうがないじゃない」


わかってる。隣を向くとき、身体も一緒に動いてしまうくらいカッチカチになっていることはわかってる。

だけど、こんなに大勢の人に注目されているんだもの、緊張しないほうが無理な話よ。

そんな私にふっと笑いをこぼしたフレイヴは、司祭の目を盗んでまたこんなことを囁く。


「無事終わったら、夜はたっぷり愛してやるから頑張れ」


ドキン!と心臓が音を立てて飛び跳ねた。

そ、それってやっぱり、甘い意味……だよね? そんなこと囁かれたら余計身体が強張っちゃうじゃない! 

顔を熱くしてじとっと睨むと、意地悪な旦那様はおかしそうに含み笑いするのだった。

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