華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「……過保護すぎる」


少々呆れ気味に、目を据わらせて呟くと、ソルレがクスクスと笑って言う。


「それほど姫様のことを大切に想っていらっしゃるのですよ。おそらく、他の誰よりも」


最後のひとことがやけに強調されているように感じつつ、私もカップに手を伸ばす。姉様はなんだか意味深な笑みを浮かべて、小さく頷いていた。

まぁ、私は王族の娘だし、人一倍大切に扱われるのも当然なのかも。

先ほどのセアリエの慌てっぷりを思い返して含み笑いしながら、紅茶に口をつけた。


「じゃあ、魔物や山賊に襲われそうになっただなんて話、絶対しちゃいけないわね」


そう言った直後、姉様がカチャン!とカップを置いた音が響いた。ソルレも唖然としている。

あ、そうか。セアリエだけじゃなくて、このふたりも驚かせてしまうよね……と気づいたときには、姉様がすごい形相でテーブルに身を乗り出していた。


「ちょっと、そんな危険な目に遭っていたの!?」

「あーうん、実は……。あ、でも助けてくれた人がいたから!」


しどろもどろになるも、姉様を落ち着かせるように両方の手の平を前に向けて、大丈夫だったのだとアピールする。

そうして思い出すのは、やはり冷たい彼のこと。

エメラルドグリーンの瞳を脳裏に蘇らせると、胸がきゅっと苦しくなるような、不思議な感覚がした。

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