副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 驚いて思わず彼の首に抱きつくけれど、すぐ目の前に現れた彼の顔に気が付いて身体を大きく仰け反らせた。

「あ、あの、やっぱり私……」

 頭が冷静になってくると、自分がどれだけ大それたことを言ったのかと羞恥心が全身を襲う。

 副社長に抱き締められて朝を迎えるなんて、想像しただけで気絶しそうだ。

「悪いけど、もう待ってあげられない」

 いつもより少し低い声が耳元で響き、彼は足早に足を進めた。

 彼の腕の中で揺れる度、爆発しそうに跳ね続ける鼓動に目眩にも似た恍惚感を感じる。

 すると自身の部屋のドアを片手で器用に開けた彼は、壊れ物を扱うようにゆっくりと私をベッドへと下ろした。

 ギシ、とベッドが軋む音がして、痛いほどに胸が跳ねる。

 熱でどうにかなりそうな顔を見られたくなくて、私は両手で顔を覆った。

「明日奈」

 淡い声がして再びベッドが軋むと、彼がすぐそばにいるのを感じられたけれど、私はいたたまれなくてこの手を離すことが出来ない。

 けれど彼は、あやすように何度も私の名前を呼んだ。
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