副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「そんなになんでも謝らなくていい」

「すみま――あっ」

 居心地が悪くなって眉を下げた私を見て、クスッと笑みを零す彼。

 言われてみて、ようやく彼には会ってから謝ってばかりだったと気が付いた。

「別になにか気になるなら好きなだけ見てても聞いてくれてもいいよ。それに嫌だったら送ってないし、むしろ俺は……」

 言葉を詰まらせた彼が、今度はこちらを見つめる。

 その甘く、熱っぽい視線に、まるで魔法をかけられたかのように全身が硬直して足を止めると、彼も当然のように足を止めた。

 どれくらいだろうか。

 傘に雨粒が跳ねる音をしばらく聞いて、視線が絡み合う間、私は呼吸をすることさえ許されないのではないかと思えた。

「君みたいな人、嫌いじゃない」

 先に口を開いたのは、彼。

 言い終えた途端、ふわりと頬を撫でる温かな感触。それが彼のものだと気付いた瞬間、勢い良く頬に熱が上った。

 ……なに? 今、なにが起きてるの?
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