副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 しかし副社長は、なにも言わず涼しい表情を浮かべていた。

「おいお前まじかよ。信じられねぇやつだな……」

 なにかを理解したのか、綺麗な顔をぐしゃりと歪めた男性は、大袈裟に息をつく。

 話の内容がさっぱり見えないんだけれど……。

 私の質問の答えが帰ってくる前に、エレベーターが到着の音を上げてしまった。

「着いた」

 ようやく口を開いた副社長。

 私も開いたドアの向こうに視線を流すと、そこには、信じられない光景が広がっていた。

「えっ? な、……ど、どうして!?」

 どう見ても、誰が見ても、ドアの向こうに現れたのは、高級マンションの部屋のドア。

「あ、望月様。お世話になっておりまーす!」

 しかしその部屋の前には、今朝私が送り出した私の荷物と、担当してくれた――引越業者の姿があった。

「わ、私の荷物が……どうして、ここに?」

 夢でも見ているのかと、何度も目を瞬かせる。

「すみませんね。あと少しで終わりますから」

 爽やかな笑顔を浮かべる引越し業者の男性たちが、次々と私の荷物を中へと運び入れていた。

 ……なにが、起こってるの?
< 67 / 196 >

この作品をシェア

pagetop