副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「いつ来ても、部屋までが長い家だなぁ」

 ポツリと呟く男性。

 しかしその意見には納得で、彼らにはバレないように少し笑みを浮かべてしまった。

 いつ来ても、ということは、二人はそれなりに親しい関係なのかな?

「ねっ、君もそう思うでしょ?」

 突然男性が振り返り、私は驚いて思わずビクリと肩を跳ねさせる。

「うるさいぞ三浦(みうら)。早く来い」

 しかしすぐに副社長の低い声が飛び、彼は「はいはい」とからかうように返答をすると、再び前を向いて歩き出した。

 びっくりした……。

 エレベーターに乗りまたもやカードキーを翳すと、彼は迷うことなく何列にも並ぶボタンの高層階を押す。

「あの、ここは副社長のお家ですか? これからお仕事かなにか……」

 遠慮がちに問いかけると、男性は形の良いアーモンド型の目をぎょっと丸めて、驚いた様子で副社長の顔を覗き込んだ。

 な、なに……!? 私なにか、マズイこと言っちゃった!?

「千秋お前……まさか、なんにも話してないとか言わないよな?」

 今度は目を細めた男性が、無表情の副社長に詰め寄っている。
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