天使と悪魔の子

1節 “喜”


昔の話だ。


『うわあぁああん!!!』


私は父と母方の祖母に会いに行った。


しかし、祖母は留守で私は悲しくて大泣きした。


「あぁもう、うるさいなぁ!!お前が泣いててもお父ちゃんは何にも感じない。
ずっと泣いていればいい。」


『なんでそんなこというのよぉっ…』


「別に、お前のことなんかどうでもいいし。」

ショックだった。

まだオムツを履いていたくらい幼い年頃で嫌でも実感した、私は“愛されていない”んだって。


その日は家に帰らず父に送ってもらい、父方の祖母の家に泊まった。


母は私が0歳の時に別居しそれからはずっと祖母が母代わりだった。


『おばぁちゃんっ、
私、なんで生まれたのっ。』


「そんな事言ったらだめよ?おばあちゃんは何があっても大好きだからね。お父ちゃんも、多分何か魔が差したのよ。」


『…っうん。』


私は祖母に救われた。


祖母の存在は、私の中で誰よりも貴重な存在だった。


“お母さんまだ来ないの?”


“私、お母さんいないんだ。”


“そうなんだ。”


今までの人生で何度も何度も繰り返してきた言葉。


そして後に来る可哀想なものを見る視線が嫌だった。


“私にはおばあちゃんがいるから寂しくないもん”


寂しい心を必死におばあちゃんで埋めようとした。


幼稚園の授業で


“母の日にお母さんにプレゼントをしよう”


というものがあった。


私は当然おばあちゃんに感謝を込めて作った。


そして母の日


沢山の綺麗なお母さんが来た。


そこに一人、よぼよぼのおばあちゃん。


恥ずかしかった。


『いつもありがとう』


「こちらこそありがとうねぇ、嬉しいわぁ」


目の端に皺を寄せて笑う。


その笑顔を見ると、恥ずかしさは少し紛れた気がした。


けど、決して消えない。



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