初めてのズル休み



失恋した時も、昨日、昇任の辞令を聞いた後も、誰にも胸の内を聞いてもらったりしなかった。

いつも、一人で飲み込んで。
誰かにぶちまけてしまえば、自分に負けてしまいそうで、惨めな自分を思い知らされそうで出来なかった。

でも、見ず知らずのこの人になら――。


「……なんだか、急に疲れたの。自分のして来たことは何だったのかなって。誰よりも真面目に仕事して来たし、誰よりも仕事を優先して来た。でも、その先に待っていたのは、明るい未来でもなんでもなかった――」


冗談ぽく話すつもりだった。
でも、口から零れて来る言葉たちに感情が乗り移って行ってしまう。


「どうして……? 私よりずっと楽してたじゃない。私の恋人だって奪ったじゃない。それなのに、仕事まで手に入れてずるいよ。私には何も残ってない。もう何を自分の支えにしていいか分からない」


ぽたぽたと零れる涙に気付いても、もうそれを堪えることも話すのを止めるのも出来なかった。
それは、その男が何も言わずに聞いていたからだ。
ただ黙ったまま隣に座っていてくれたから。

ただ吐き出したかったのかもしれない。

次から次へと感情が溢れて来る。


「私だって、彼に甘えたかった。でも、出来ないのよ。仕事だってたまには手を抜いたりしたい。でも、私には、ほどほどになんて上手いこと出来ない。でも、それが悪いことだなんて思わなかった。だけど、たどり着いた先がこんな自分だもの。全部、間違いだったって今では分かる」


残りのビールを飲み干した。
喉を通る苦味が、更に涙腺を刺激した。



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