ブサイクとは
ブスとイケメン
高校一年生。
四月。
山内まこは、俗に言う、『こうこうでびゅー』に乗り遅れ、結局小中高と同じ空気感の凄まじいブスとなってしまった。
(なんたる失態…)
大学2年になる兄に手伝ってもらったのにも関わらず、相変わらずクラスの最低lineに居座ってしまっている。
すでに女子もグループを作り、入る隙間もない。
(兄ちゃん、ごめん。やっぱ無理だったわ)
今頃大学で講習を受けているであろう兄に向けて菩薩のような顔で謝った。
すると、その願いが届いたのか、数学の教師の目とあった気がした。
「山内、ここの問題やってみろ」
ニッと笑う爽やかなイケメン。
実はまこの兄の先輩である。
そして、もうひとつ。まこは危機を感じた。
(マズイ、数学は本当にできない!!!)
そう、数学だけは出来ないのだ。
兄は数学が得意だと言うのに。
ひとり慌てふためく。
ブスがアタフタしているのが面白いのか、クラスのイケイケ系の男子グループが笑っている。
(くっそ、いつかガムでもふんじまえ)
なんとも小さい恨みである。
と言うのも、小学校からこれなので今更なにも感じない。
「大丈夫か?」
(大丈夫じゃねーの知ってるだろーが)
今度合ったときに何かを奢らせよう。
軽く恨みを持って睨む。
溜め息を吐いて机を見た。
すると。
トントン
まこの机を細くて長い綺麗な指が紙切れを指していた。
驚いて右を見る。
「これ、合ってると思うよ。言ってみて」
ニコッと微笑むイケメン。
(こ、こいつは確か学校1のイケメンと噂される橋下悠!!!)
クラスの人間など全く知らないが、この男だけは知っている。
ブスが関わってはいけないジャンルの人間である。
「え、えーっと。86です」
「お、やるな。正解だ」
黒板を書くために前を向いた。
まこは椅子に座って頭を回転させる。
(何故私みたいなブスを助けたんだ!?
なにか見返りが欲しいのか???
金欠だから何か奢ってくれとか??
なるほど、財布を増やすための策か)
__という事になり
「さっき危なかったな。俺の回答合ってて良かったー」
「なんでも言って、私の所持金で奢れるものは限られてるけど」
「え、なんの話??」
「?
財布を増やすために私みたいなブスを助けたんじゃ…」
そう言うと橋下は首が取れるんじゃないかと思うほど首を振った。
「違う違う!困ってたみたいだから!」
(なるほど、こんな大勢の前で言うのは流石にイメージを壊すか。
じゃあ放課後だな)
「わかった。放課後コンビニ行こう」
(買えるものは少ないが)
「え?う、うん」
橋下は後頭部をかきながら頷いた。
(いったいどれくらい奢れば良いんだろう。
ハーゲン〇ッツ5個とか?)
一日それしか考えていなかったまこであった。