struck symphony
光りの道を 感動し、緊張しながら ゆっくり…

一歩… 一歩…と、歩いてゆく。




座席に記された番号を見ながら
階段を一段ずつ降り、
自分たちの座席を探していく。



自分たちの番号から
数字がどんどん離れているのに気づき、
恵倫子は、足を止めた。

響も立ち止まり、恵倫子を見上げる。




恵倫子は、視野を広げて 大きく見渡し、

“あぁ!”

番号の頭のアルファベットが、
2階席に大きく記されてあるのを見つけた。


“…なんだか… 入り口を間違えちゃったかなぁ…”

「ゆら、2階席だよ。初めてだねぇ」


恵倫子は、響に声掛け 手を引きながら、
どんな視界なのだろうと、
わくわくしながら2階席へと階段を上がった。


そして、漸く
自分たちの座席を見つける。

“あぁ、ここだっ”


2階席の 真ん中一番前。


響を座らせ、
恵倫子も 静かに腰を下ろす。



ステージの近くではなかったが、
自分の前に人のいないながらの
上からの見晴らしは、素晴らしい。



“私は、チケットを取ってなかったんだもの。
陽音さんは、
考えて いい場所を取ってくれたのねぇ…”


恵倫子は、陽音への感謝の気持ちで
そこからの眺めを めいっぱい見渡していた。






光りの演出を見渡していると、
感動してくる…



陽音の このツアーへの意気込みが、
しひしひと感じられてきて…



恵倫子は、もう… 涙が出そうだった…



“まだまだっ… しっかり観ないと…”



恵倫子は、自分に言い聞かせ、涙を拭いながら
響へと視線を移す。


今日は大丈夫かな…と、泣きやしないか心配したが、
響は、
綺麗な光景に見蕩れて
心地良い気分を味わっているようだった。




恵倫子は、ホッと胸を撫で下ろし、

静かに 開演を 待ちわびた…



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