その恋、記憶にございませんっ!
 まあ、偉そうですよねー、と思っていると、翔太は、
「慎吾さんもだが。
 お前のような口先だけの男にも唯は渡せんな」
と蘇芳を睨んで言ってくる。

「ほう……。
 俺が口先だけの男かどうか、会ったばかりなのにわかるのか」

 そう言う蘇芳に、

 そうですよね。
 口先だけじゃないですよねー。

 どんなロクでもないことでも、迷いなく実行してますよねーと思っていた。

「……キジも鳴かずば、撃たれまいにな」

 そう呟いた蘇芳の目つきを見たとき、唯は思わず、

 翔太さん、逃げてっ!

 と思ってしまっていた。

 この人、訳がわからないから、とりあえず、逃げてっ!

 いや、別に翔太の味方ではないのだが。

 どう見ても、翔太の方が小物で、蘇芳には、はなから敵いそうにはないので、そう言いたくなるのだ。

 しかし、翔太は翔太で、よくわからない男なので、揉め事になっても、とりあえず、皿とフォークは離しそうにないし、蘇芳に激怒しても、美味しい料理の並んだこの席を立ちそうにはない。
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