その恋、記憶にございませんっ!
「お、美味しいですよ、このマッシュルームのタパス」
ととりあえず、翔太に料理を勧めてみる。

 蘇芳を睨みながらも、翔太はそれを口にした。

 タパスは、スペインの小皿料理だが、そのタパスの定番料理のひとつが、マッシュルームのセゴビア風だ。

 ひたひたのオリーブオイルにニンニクや生ハムの詰められたマッシュルームが浸かっていて、熱々だ。

 ニンニクがよく効いている。

 はっ、ニンニク!
と思ったが、まあ、全員が食べているので、いいか、と思いながら、唯も美味しくいただいた。

「……美味いじゃないか。

 おっ。そうだ。
 じゃがいものトルティージャを頼んでなかった。

 俺はあれが好きなんだ」
と翔太が言い出す。

 じゃがいものスペイン風オムレツのことだが、程よく半熟のトルティージャに、これもまたガツンとニンニクが入っていた。

「美味しい。
 美味しいですけど。

 これまた、ニンニクですよっ」
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