その恋、記憶にございませんっ!
「私の服を仕立てさせる都合があるし。

 夏にはお友達と旅行に行くしね。

 日取りは早く決めてちょうだい」

 あらもう、こんな時間、と壁の落ち着いた金色の時計を見て、しのぶは眉をひそめる。

「万里子(まりこ)さんが帰ってくるじゃない。
 唯さん、貴女も支度して」

 は? とまた思っていると、蘇芳が、
「万里子って、うちのばあ様のことだ」
と耳打ちしてくる。

「未だに少女のような頭の中の人だから、ばあ様とか言ったら、殴り殺されるから、お前も、万里子さんと呼べよ」

 何故、少女のような人が、人を殴り殺すのでしょうか……と思いながら固まっていると、
「ほら、唯さん、早く来なさい。
 一緒に万里子さんを出迎えるのよ。

 ほんと姑って厄介なものよ」
と急いで下に下りる準備をしながら、姑が言ってきた……。






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