愛され任務発令中!~強引副社長と溺甘オフィス~
ファイルを抱えたまま変な汗が流れそうになったとき、副社長は鼻を鳴らした。

「父さんお墨付きの秘書だ。まさかこれぐらい覚えられないとは言わないよな?」

いつも通り無表情だけど、言い方に悪意を感じる。人をバカにしたような口ぶりにイラッとしてしまった。

「もちろんです! こんなの朝飯前です!!」

見栄を張って宣言すると、副社長はジャケットを羽織るとバッグを手に取った。

「じゃあ覚えたら同行させてやるから。……どれくらいの早さで覚えてくれるのか、期待しているよ」

抑揚のない声で言うと、副社長はスタスタと部屋から出ていってしまった。

「なによ、人をバカにして」

悔しくて副社長が出ていったドアを睨んでしまう。


こうなったら副社長がびっくりするくらいのスピードで覚えて、ギャフンと言わせてやろうじゃないの!

それでちゃんと秘書としての仕事をさせてもらうんだから。

ひとり闘志を燃やし、自分の部屋に戻ってさっそくファイルを開いた。
< 68 / 319 >

この作品をシェア

pagetop