ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
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付き合う事になった浜田と早希の2人の時間を邪魔する訳にはいかないと思った美姫は、2人と別れ1人アパートに帰ってきた。
冷え冷えとした狭い廊下の壁には、まだ組んでないダンボールが置かれ、部屋には衣類などが詰められたダンボールがいくつか重ねて置いてある。
もう、着る機会もない数着の通勤着がダンボールの上に無造作に置かれているのを見ると、今週の金曜日に会社を退職し、その次の日には引っ越しをする予定なんだと思うと寂しくなる。
自分で辞めると言ったことだが、こうも簡単に退職を許可されるとは思ってなくて、会社の組織の中、自分の代わりなんていくらでもいるのだと思い知らされたのだ。
大勢の中の1人でしかない。
必要とされていないのだ…
峯岸にとっても、美姫は大勢いる女の中の1人でしかなかったのだろうか?
あの日、峯岸からわずかに感じた愛らしきものは、幻だったのだろうか?
美姫
と、愛しげに呼ぶ声
抱きしめてくれた腕の温もり
何度もキスした唇の感触
肌をなぞる峯岸の手のひらを思い出し、せつなくなる。
会いたい…
私をぎゅっと抱きしめて、キスしてほしい。