ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

峯岸はずるい…


美姫の身体に忘れられない記憶を残し、嫌いになる事もさせてくれなかった。


ゲームは終わりだと言われた方が、峯岸を忘れる努力をし、幸せになる道を選んだだろう。


それなのに


浜田と幸せになれ


なんて言われても、今更、幸せになれなるはずがない。

美姫の心を翻弄し、惑わせ、悩ませる男なんて峯岸しかいない。


心のどこにも他の男が入る隙間なんてないのだ。


ごめん、うそだよ…


と言って、抱きしめてほしい。


戻らないとわかっているのに、叶わない願いを願うほど、心は峯岸を求めている。


後悔なんてしていないのに、こんなに悲しいのはどうしてなんだろう?


この部屋に、たった半日いただけの人なのに、どこにいても思い出してしまう。


玄関先での激しい口づけ


狭い廊下で息つく間も与えてくれなかったキス


ベッドまで抱き上げられながらついばんだキス


何度も無我夢中で求めあったベッド


悪戯を仕掛けてきた台所


どこにいても、峯岸を思い出してしまうのだ。


引っ越ししようか?


それよりも、もらった名刺とスマホに残るアドレスを消去するべきだと思うのに、捨てられないでいる。
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