今年の夏もキミを想う…。
「一つは宮崎の分で、もう一つは高知先輩の分」
差し出されたパックから、飴の甘い香りが漂ってくる。
飴でコーティングされて、テロっと光る蜜柑。
まるで自分がおごってやったのだと言わんばかりに得意げな顔をしている和果子から、宮崎はもう何も言うまいと無言で、飴から突き出た棒の部分を掴んで持ち上げる。
隣を見れば、高知も嬉しそうな表情で和果子から飴を受け取っている。
宮崎は、ジーパンの後ろポケットにそっと手を当てた。
それから、思い立ったように反対のポケットに手を入れると、携帯を取り出して食べる前の綺麗な状態をカメラで撮影する。
「ああ……夏だ。オレは今、とてつもなく夏を感じている」
隣から聞こえてきたしみじみとした声に、宮崎も携帯をポケットにしまって飴に齧り付く。
パリッと小気味いい音がして、飴が割れた。
「あっ、そうだ忘れてた。宮崎、今何時?」
「ふぇい?」
唐突な高知の質問に、宮崎は飴を咥えたままで首を傾げる。