今年の夏もキミを想う…。
「い、急げって言ったのは、先輩の方じゃないですかっ!!」
「いやあーごめん。見てたら色々食べたくなっちゃって」
「それなら、後でにしてくださいよ!」
ゼーゼーと荒い息を吐きながら全力疾走する宮崎と、そのやや後ろを屋台の食べ物が大量に詰まった袋を持った高知が走る。
そこからだいぶ遅れて、和果子の下駄がカラコロと音を立てていた。
「本当に、こっちでいいんですよね……。祭りの、会場から、離れてる気がしますけど」
「いいの、いいの。こっちに穴場スポットがあるんだよ。あっ、そこ右ね」
高知に案内されるままに方向転換して、宮崎はひたすらに駆ける。
「そ、そもそも穴場なんだったら……こんなに、必死になって走る必要、なくないですか?」
「オレにとっての穴場は、他の奴にとっても穴場かもしれないだろ?基本、こういうのは早い者勝ちだから」
「早い者勝ちしないと、取れないような場所って、穴場とは言わないんじゃ……」
「和果子ちゃん、大丈夫かなー」
わざとらしく話をそらして後ろを振り返る高知に、軽い殺意を覚えながら宮崎はひた走る。