俺様ドクターに捕獲されました


とりあえず、佳乃さんに指示を仰ごうと、鞄の中を漁って携帯を探す。でも、焦っているからか、こういうときに限ってなかなか見つからない。


『……あんた、名前は?』


ようやく鞄の底にあった携帯を見つけたところで唐突に聞こえてきたその声に、ビクリと身体が跳ねる。


びっくりした。通話、切れてなかったんだ。ていうか、当然カメラもついているよね。


もしかして、ひとりでバタバタしているのずっと見られてた? うわ、恥ずかしい。


『早く答えろよ』

「す、すみません。あ、天野です」

苛立ったような声に、慌てて答えるとしばしの間のあと、自動ドアが開いた。


『部屋、三十階な』

「え?」

間抜けな私の返事に答えはなく、ブツリと鈍い音が響いた。今度こそ、通話が切られたらしい。自動ドアが閉じ始めたのを見て、とりあえず急いで中に身体を滑り込ませる。


振り返ると、扉の向こうで例のコンシェルジュさんが笑顔で頭を下げていた。


……よく止められなかったな、私。かなり挙動不審だったのに、『Kanon』の制服を着ているからかな。


それはそうと、あれは、部屋に来いっていうことだよね?


帰れって言っていたのに、もしかして私の行動を見て佳乃さんに怒られるんじゃないかって心配してくれたのかな。


インターホンでの対応は怖かったが、気を使ってくれたのだから、とりあえず部屋まで行ったほうがいいだろう。





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