俺様ドクターに捕獲されました
そう気持ちを仕事モードに切り替えて、彼のあとに続いてナースセンターに入ったのだけれど……。
* * *
「あ、天野……里衣子と申します」
うう、い、痛い。
視線が痛い。彼に紹介されて、グサグサ突き刺さる視線に顔を強張らせながら頭を下げるが、みなさん顔がとても怖い。
この空気は、覚えがある。羨望より嫉妬多めのこの空気。みなさん、彼のファンなんですね。
なかには、本気で狙ってた人もいるんだろうな。一際、恐ろしい形相で私を睨んでいるあの人とかね。
うん、あまり関わらないようにしよう。そう冷静にまわり観察していると、隣にいる彼が突然私の肩を抱き寄せた。
なにを考えているのかと顔をあげた私は、その顔を見て息を飲んだ。
懐かしさを覚える、不敵な笑みを浮かべた、なにかを企んでいるような顔。
これにも、嫌というほど見覚えがある。なにをしようとしているのが手に取るようにわかる自分が嫌だ。
でも、それはここで言ったら絶対ダメ……。
「この子、俺の大切な子だから。いじめたりしないでね」
彼がそう言った瞬間、ナースセンターの空気が凍った。
ああ、言っちゃった。昔よりはオブラートに包んでくれているけど、言っていることはさして変わらない。
その意味は、「俺のものに手を出すな」だ。