俺様ドクターに捕獲されました


「じゃ、忙しいなか悪かったね。行くぞ、りい」


凍りついた空気を気にする様子もなく、彼は私の肩を抱いたままナースセンターを出る。


少し歩いたところで、いまだに肩を抱いたままの腕を振り払った。が、振り払えなかった。


それどころか、さらに肩を抱き寄せられて、仕方なくそのまま彼の顔を見上げる。


「ちょっと、優ちゃん。なんであんなこと言うの? 私、すごい睨まれてたんだけど。仕事がやりにくくなるじゃない」

「いいだろ、別に。もう、いい加減面倒くさかったんだよ。俺は、りいだけいればいいし。それに、大丈夫だ。りいが担当する患者はあの病棟にはいない。他の病棟には、あそこまでしつこいのはいないから安心しろ」


なんだ、それ。じゃあ、あの発言は狙ってなわけ?


なんて人だ。人を女除けに使うなんて。そんなもんに使うんじゃなーい! だいたい、大切に扱われたことなんてないわ!


……と、声を大にして叫びたいが、そんなことは言えないチキンな私。


一応、控え目に「女除けに使うなんてひどい」ということは訴えておく。まあ、そんなものを彼が気にするはずもなく、ふんっと鼻で笑われてしまった。


「りいが大切なのは事実だ。それに、お前はそんなに柔じゃない。ま、なにかあったら俺が守ってやるから、安心しろ」

< 65 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop