清廉の聖女と革命の鐘
「クリスティーナ様!どうしたのですか!?」
ブルーノは突然悲鳴を上げて倒れ伏した主の元に駆け寄る。身体は痙攣したように小刻みに揺れ、菫色の瞳からは光が失われていた。
「クリスティーナ様!すぐに医務室に連れて行きます」
ブルーノは彼女を抱き上げようと身体に手を伸ばす。
「…ま、って…」
クリスティーナの絞り出された声に反応し、ブルーノはピクリと動きを止めた。
「…ぇ…い」
「クリスティーナ様?」
ブルーノは彼女の声を聞き取るため耳を彼女の口に近づける。
「結界が…破られ、たの…」
ブルーノは、途切れ途切れながらクリスティーナの言葉を正確に読みとった。
ブルーノはすぐに近くにいるギルバートに彼女からの伝言を伝えた。
ギルバートはブルーノが最後までいい終わらないうちに飛び出していった。さすがは聖騎士団長。老いても行動力は、平和ボケした若い騎士より素早い。
「…それにしても、いったい誰が?」
…今は、そんなことを考えている場合じゃないな。
ブルーノは一抹の不安を感じながらも、自分の腕にぐったりともたれかかるクリスティーナを、しっかりと抱き寄せた。
クリスティーナは眠っているようだが、その秀麗な面には苦悶の色が浮かんでいた。額には珠玉の欠片のような汗が滲み、血の赤が鮮明だった唇の色は褪せている。
彼女の先程までうつろにさまよっていた瞳は、今はかたく閉ざされていた。
相当体力を奪われたのだろう。呼吸が乱れている。
つらそうな主の姿にブルーノは胸を痛めながら、彼女の額にかかった白銀の髪を優しくはらう。