清廉の聖女と革命の鐘
クリスティーナは、ズキズキと頭をつらぬくひどい激痛に思わず意識が戻った。
はっと目を開けると、互いの鼻先がくっつくのではないかと思われるほど間近に見知らぬ男がいた。
「あ!聖女さんが起きた!おっはよー!」
くりくりと丸い瞳がいたずらっ子のように細められる。
「…ぁ、きゃあああああああああ!!」
クリスティーナは生きてきたなかでも最大級の悲鳴を上げた。
驚いた少年が後ろに尻もちをつく。
それと同時に、
「聖女様!頭を下げてください!」
気迫のある見知った従者の声が聞こえ、クリスティーナはすぐに頭を下げた。
その瞬間、ものすごいスピードで頭上を何かが横切った。空気がうなり声を上げる。
「うわっ!」
少年が短い悲鳴を上げて、避けるために飛んだのか葉を踏みしめる音がした。
「聖女様!お怪我はありませんか!?」
珍しく取り乱したブルーノにクリスティーナは顔を上げて柔らかく微笑んだ。
「大丈夫よ」
「…聖女さまぁっ」
ブルーノがいきなりクリスティーナを引き寄せ、彼女の体を包み込んだ。突然の包容にさすがのクリスティーナも頬が熱くなる。
「私、わたしっ、聖女様がもう目覚めないのかと心配でっ」
普段冷静で大人っぽいブルーノからは信じられないほど頼りない声だった。
「ブルーノ…心配かけてごめんなさい」
クリスティーナは彼の艶めく栗色の髪をゆっくり撫でた。
「いいえ、無事でなによりです。私こそ取り乱してすみません。それより、この状況をどうにかしなくてはいけませんね」
切り替えの早さはさすがというところか。ブルーノはクリスティーナを背後に隠しながら改めて剣を構えて臨戦態勢をとる。
いつの間にか、3人はクリスティーナたちを取り巻くように散開していた。