結構な腕前で!
「あれあれ。大丈夫ですかー」

 相変わらず萌実を抱いたまま、せとかはぺしぺしと萌実の頬を叩いた。
 ややあってから、ゆっくりと萌実の口が動く。

「……あれ……何ですか」

「ん。良かった。壊れてはないみたいですね」

 にこ、と微笑むせとかに、萌実の体温は一気に上がった。
 同時の脳みそも動きだす。

「うわわっ! ていうか先輩! ごご、ごめんなさい! あ、いやありがとうございます?」

 せとかの腕の中で、萌実はわたわたと暴れた。
 やはり憧れの先輩の笑顔は心臓に悪い。

「とりあえず、あれが我が茶道部の裏活動。ああいうのの相手をするから、体力が必要なんです」

 萌実を降ろしながら、せとかは何てことのないように言う。

「はぁ、なるほど。て、いやいや。ああいうのって。あれ、何です?」

「えっと。こっちの世界に漏れてしまった魔のものっていうか」

 裾を捌いて再び釜の前に座るせとかは、元のぼーっとした雰囲気に戻っている。
 その横に、せとかがどかっと座った。

「こういう部だから、入部希望者も少なくてね~。萌実ちゃん、歓迎するよ」

 胡坐をかいて、せとみは爽やかに笑う。
 なるほど、こちらのほうと先に会ったわけだ。

 となると、中学の頃から憧れていた先輩は、どちらなのだろうか。
 北条先輩が双子だなど、今の今まで知らなかった。

「とりあえず、改めて自己紹介しておこう。俺が北条 せとみ。で、こっちが部長の北条 せとか。ちなみに、さっき山で会ったのは俺のほうね。それでこいつらが……」
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