結構な腕前で!
「橘 はるかで~す」

「橘 はるみで~す」

「「部長たちとは従姉妹で~す」」

「……あ、南野 萌実です」

 同じ顔の二人組が二組。
 何か不思議な空間だ。

「とにかく新入生は歓迎だ。俺とせとかは見分けがつくだろ? はるかとはるみはわからないだろうから適当でいいぜ」

 へら、と笑ってせとみが言う。

「あ、ひど~い」

「私たちだって先輩なんだから~」

「「私たち、二年で~す」」

 確かせとかたちも二年のはず。
 ということは、三年はいないということか。

「まぁ裏活動のほうがメインだから、人数も少ないのさ」

 そんな萌実の心を読んだように、せとみが言う。

「って、いやあの……。何ですか、その裏活動って」

「だから、漏れて来た魔の退治」

「そんなことが普通に行われてるっておかしくないですか?」

「そう? 皆承知だよ? だから誰も茶道部に入ってくれなくてさ、万年人手不足」

「でもその分部費の予算は莫大なんですよ。そらそうでしょうね、身体張ってんですから」

 何てことのないように、せとみとせとかは説明する。
 くらり、と萌実は眩暈がした。

「そんな構えなくても大丈夫。慣れるまでは、ちゃんとサポートするから」

 せとみが萌実に微笑みかける。
 う、とお暇するほうに傾いていた心が、その笑みに引き戻される。

 憧れの先輩に守って貰える。
 こんなチャンスはない。
 話すことができるとかいうレベルではないではないか。

「が、頑張ります! よろしくお願いします!」

 かくして萌実も茶道部の一員になったのであった。
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