結構な腕前で!
「茶道部はテスト前でも通常運営なんですね」

「魔はテストだからって大人しくしてくれませんからね」

 ということで、ここのみいつもと変わらない。

「テストが心配なら、僕が教えてあげますよ」

「しええぇぇっ! 本当ですか?」

 早く帰ったからといってテスト勉強するとは限らない。
 なら部活に出て、さらに憧れの先輩に教わったほうが効率がいいではないか。

「橘先輩たちは?」

「あいつらはそれこそ勉強です」

 さらっと言う。
 壺二人がいないというのはどういうことだ。

 おや? てことは……。
 萌実は周りを見回した。
 この野点の席には二人だけ。

「ぜ、贅沢ですね」

 いきなり意識し、萌実はぎくしゃくと口を開いた。
 せとかが、沸いてきたお湯を掬いながら視線を上げる。

「こんな野点を、二人で楽しむのって」

「わらわらいるより、二人のほうがいい」

 さらにさらっと言われ、萌実は落ち着きなく景色に目を転じた。
 山の上から見下ろす広大な敷地の学校は、今日はグラウンドにも人影はない。

 校門のほうに目を凝らすと、下校する生徒の姿が小さく見える。
 ぼーっと学校を見ていると、北校舎の一点が霞んで見えた。

「どうぞ」

 せとかの声に意識が引き戻され、座った膝先に目を落とすと、上用饅頭が入った菓子鉢が置かれていた。

「……あの、先輩」

「遠慮せずどうぞ」

「いや、あの。これ、お茶菓子ですよね?」

「そうですよ。さ、お茶を点ててる間にどうぞ」

 にこりと言われ、とりあえず萌実は作法通りに饅頭を一つ箸で持ち上げた。
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