結構な腕前で!
「重いです」

「あんこがぎっしりですからね。でも上品な甘さで、見かけほどしつこくないんですよ」

「懐紙に乗りませんよ」

「あ、じゃあ広げてしまいましょう」

 さっさとせとかは折ってある懐紙を広げ、いっぱいに広げた上に饅頭を促す。
 上用饅頭というのは確かにいろいろな大きさがあるが、お茶菓子として出すものは通常小さいものだ。

 というか上用饅頭に限らず、練り切りだって小さい。
 お茶菓子は小さいものなのだ。

 が、菓子鉢の中に入っている上用饅頭はでかい。
 四つしか入ってないのだが、重ねないと鉢に入りきらず、それでも鉢から溢れそうになっている。

 箸で持ち上げると、指がぷるぷるするほどだ。
 手の平を覆う大きさの饅頭の中に、あんこがぎっしり詰まっているらしい。

「ていうか、これをお茶なしで食べるのはキツイです」

「そうですか? じゃあ抹茶と一緒に頂くことにしましょう」

 しゃくしゃくしゃく、とせとかが優雅にお茶を点てる。
 考えてみれば、この茶道部のお茶菓子は量が多い。

 通常の練り切りのときもあったが、そのようなスタンダードな菓子のときが少ないのだ。
 茶道のお菓子としては、妙なものがよく出る。
 そして、そのときは量が多い。

「あのぅ。せとか先輩のお家、茶道の家元ですよね。先輩のお家の流派って、これが普通なんですか?」

 茶道の家元、というからには、お弟子さんとかもいるはずだ。
 皆毎回このようなでかい茶菓子を食べているのだろうか。
 というか、そのような流派、あるのだろうか。
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