結構な腕前で!
「え、そう? 萌実さんは、そうなの?」

 問われて萌実は考えた。
 物静かで凛とした空気を纏う憧れの先輩は、ただぼーっとしていただけで、わけのわからない魔と戦うのが日常の変人だった。

 遠目で見ていた頃は儚げですらあったせとかの実態は、人の三倍ほどのご飯をぺろりと平らげ、柄杓を振り回して湧き出る魔を無慈悲にぶちのめし、由梨花を一切の情なく斬り捨てるサディストだ。

「いや……そうとも言えないかも」

 意外な一面がありすぎるせとかだが、それは必ずしも良いほうに働くわけではない。

「ていうか、それでもせとか先輩が好きって、私おかしいんじゃないの」

「いや、元々魔の気配を感じてせとかを見つけたとしても、そこで恋心が芽生えた時点で、萌実さんおかしいわよ。普通はせとかを見ても、さっき言ったように、次の瞬間には忘れてるから」

「え~、そんなことないですよ。格好良かったですよ?」

「それはわかんないわ」

 しみじみと、はるみは何故か憐れむような目を向ける。
 せとかをよく知るイトコにこのように言われるなど心外だ。

「はるみ先輩は、どんな人が好きなんですか?」

「私は生気漲る人が好きね」

「若者は全てそうじゃないですかね」

「違うわよ。せとかなんて命の灯が今にも消えそうじゃない」

「やめてくださいよ、不吉なこと言うの」

 女子高生的な会話(内容はともかく)の後で、はるみはようやく真面目な顔になって腕組みした。

「とにかく由梨花ん家に行かないで、初代神の子のことを調べないとね」

「え、やっぱりせとか先輩を連れて行くのはヤバいからですか」

「そう。いや、萌実さんの心配事じゃなくてね。もしかしたら、せとかも萌実さんと同じように、意識がなくなるかもしれないでしょ」

 きょとん、と萌実ははるみを見た。
 あれは壺系の力ではないのか?
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