結構な腕前で!
「……へ~え。そういうこと」

 はた、と気付けば、はるかが思い切り目尻を下げて、萌実を見ている。
 これは絶対誤解している。
 はるみは萌実が好いているのはせとかだと知っているのに、何この振り! と焦る萌実に、はるかは少し身を寄せて声を潜めた。

「せとみは結構アピール下手だから、萌実さん、察してあげてね」

「あ、あのっ! そそ、そんなことは……」

「でも、いい奴よ」

 にこにことせとみを勧められる。
 せとかの前で、あり得ない! と萌実が妙な汗を流していると、こと、とせとかが茶碗を置いた。

「あまりふらふらする男は、僕はお勧めしませんが」

 つまらなそうに言う。

「違います~!!」

 堪りかねて、萌実は話をぶった切った。
 はるかはともかく、せとかにだけは誤解して欲しくない。
 ちょっと驚いた顔で、せとかが萌実を見た。

「私っ、別にせとみ先輩のこと好いてるわけじゃないですからっ」

 鼻息荒く言う。

「ああ、そうですね」

 あっさりと、せとかが頷く。
 あれ、もしかして先輩、私の気持ちに気付いてる? と安心するやら焦るやらの萌実だったが、続くせとかの言葉に青くなる。

「せとみのほうが、南野さんを好いてるってことですもんね」

「それも違いますよっ!」

 噛みつくように否定する。
 が、はるかが、え~、そぅお~? といらぬ突っ込みを入れてくる。

「萌実さんとせとみって、結構お似合いだと思うけど? せとみ、ああ見えて結構人気あるみたいだし、悪くないと思うけど」

「ていうか、そんな大層なお人が、私を好きになるわけないじゃないですか」

「あら、わかんないわよ。人の好みは人それぞれだし」

 うふふ、と笑うはるかに、萌実は内心、確かに、と納得した。
 萌実は土門は趣味ではない。
 が、はるかは土門がいいのだろう。
 一体この何歳なんだかわからないようなむさ苦しい男の、どこがいいのだろう。

---まぁいい人ではあるんだろうけどね---

 何だったら、せとかよりも頼り甲斐はあるだろう。

「ま、せとみの努力も汲んであげてね」

 ふふ、と笑い、はるかは乗り出していた身体を戻した。
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