結構な腕前で!
「はい、萌実さんも」

 ずい、とはるみがあんこと白玉団子がみっしりと詰まった器を差し出す。
 とりあえず、皮に薄くあんこを塗り、白玉団子を一つ落とすと、さっさと蓋をした。

「で? せとみは?」

 ぱりぱり、といい音を立てて重たそうな最中を食べるせとかに、はるみが、ああ、と呟いた。

「特に何も。まだ連絡がないってことは、調べ物は順調ってことかしらね。帰るっても言ってこないし」

「じゃあ家に帰ってからですかね」

 あれだけの最中をあっという間に食べ終え、うえっとなることもなく、せとかは優雅にお茶を飲んだ。
 せとみは今日、真行寺家に行っているのだ。
 由梨花に初代神の子関連の文献を持ってきて貰うにしても、それがどれほどあるのかわからないし、頼んで帰って探して、となるよりは、こちらから出向いたほうが早い。

 だがおそらく、びーちゃんの影響を受けないであろうはるかもはるみも行きたがらず、由梨花の希望もあって、せとみが出向くことになったわけだ。

「せとみが案外あっさり真行寺さんのところに行ったのも驚きだわ」

 そういうはるかは、ここしばらく土門べったりで、茶道部の面々の動きに鈍くなっているようだ。
 名前で呼ばないところからしても、元々はるみのほうが由梨花と仲が良いらしい。

「あらはるか。せとみの気持ちが離れたら嫌なわけ?」

 きらりと、はるみが言う。

「何のことよ。私は単に、あれだけ逃げ回ってたせとみが、自ら真行寺さんの懐に飛び込んだのが意外なだけ」

「それはほら、萌実さんのためだもの」

 いきなりはるみが、意味深なことを言った。
 え、と萌実が顔を上げると、はるみは何か含んだような顔で、にっこりと笑みを向ける。
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