結構な腕前で!
第三十八章
 ふと、せとみが手を止めて顔を上げた。

「……何か今、萌実ちゃんの声が聞こえたような」

「え? まさか。穴ってかなり上のほうじゃない」

 足元に散らばった煙の欠片を箒で掃きながら、はるみが言う。
 茶室の中はいたるところに煙の欠片が散らばって真っ白だ。
 しかも壁や天井がところどころ破壊されている。

「ああくそ! 疲れた」

 足元の欠片を蹴り飛ばし、せとみはどかっとその場に胡坐をかいた。
 汗だくなところを見ると、ここでも相当な乱闘があったようだ。
 少し向こうでは、同じように土門がへたっている。

「萌実さんの声って? 何か感じたってこと?」

 ざかざかざか、と欠片を掃きながら、再度はるみが声をかけると、せとみはがしがしと頭を掻きながら、少し首を傾げた。

「いや、ほんとに耳に聞こえた。何か絶叫みたいな」

「絶叫? え、何かあったのかしら」

 驚いて、はるみが窓に顔を向けて山のほうを見る。

「そういえば、霧が晴れてるわ」

 ということは成功した、ということだと思うのだが。

「大きな力の波動は感じましたわよ。今まで感じたことのない、物凄い力が何度か放たれたみたいですわ」

 上座で脇息に寄りかかり、但馬に大きな団扇で煽がれている由梨花が言う。

「せとみ様、こちらへどうぞ。但馬、もそっと大きく煽いでせとみ様にも風を送りなさい」

「いやいい。お前は平気なのか?」

 団扇を振りかぶる但馬を制し、せとみが由梨花に問うた。
 由梨花も攻撃に参加していたので、一応状況を確認したのだ。

 せとみは慣れているし男だし、何より守りの力もあるので多少の無理も効く。
 由梨花は慣れてはいるだろうが、守りの力はないのではないか?
 そう思ったのだが、由梨花はにっこりとほほ笑んだ。

「まぁせとみ様。わたくしの心配をしてくださるの?」
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