結構な腕前で!
「あのときせとかが萌実ちゃんの手を翳したのは、萌実ちゃんと一緒に力を使ったんだよ。だから、いつもだったらぶっ倒れて意識不明なところを、普通に起きてられるわけ」

 ぼーっとせとみの言葉を聞いていた萌実は、ある一言に、はっと我に返った。

「い、意識不明?」

 重体ではないか。
 しかも直後にそんなことになっていたら、もしその一撃で魔を倒せなかった場合、簡単にやられそうだ。
 驚いていると、せとみは軽く「寝るだけだけどね」と付け足した。

「力を放出すれば、結構どんな魔も倒せるし、言ってしまえば無敵なんだけど、その後がね。ぶっ倒れて軽く半日は起きないし、結構大変なんだ」

「はぁ……。確かに」

「でも萌実ちゃんを介しての攻撃だったら、全然そんなことないってこと」

「なるほど。でも、何で私? それも桃の力なんですか?」

「桃、というか、萌実ちゃんの力だよ。南と桃、両方の力が発揮されてるんだ」

「素晴らしいです~」

「そんな人、初めてですよ~」

「「まさに運命です~~!」」

 きらきらと目を輝かせて、はるかとはるみが萌実のほうに身体を乗り出す。
 しかし萌実的には微妙だ。

 憧れの先輩の運命の相手、というのは何ともロマンチックだ。
 が、それはあくまで魔と戦うにあたってのカンフル的存在なだけであり、そこに甘やかな気持ちなど欠片もないのではないか。

 先のせとかの、『避雷針みたいなもの』という表現からも、ひしひし伝わる。
 わかりやすく例えただけかもしれないが、言われたほうは気分いいものではない。
 萌実がせとかを何とも思ってなければ、そうでもないのかもしれないが。

---せとか先輩は、ほんとに何考えてるのかわからない---

 せとみのほうがわかりやすい。
 せとかは表情が乏しいのだ。

 いつもぼーっとしていて、人の話も聞いてるんだか聞いてないんだか。
 ……そんなにべらべら喋ったこともないが。

---前途多難だな---

 何か厄介な人を好きになってしまったかもな、と、萌実は密かにため息をついた。
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