結構な腕前で!
「え……と、さっきのは、先輩の力じゃなくて、私の力?」

「ん~、そうですねぇ。半々かな。守りの力っていうのは、普段そんなにいらないものでしょう? だから基本的に自力では引き出せないんです。サポートが必要なんですね」

 じゃ、さっきの力は、私と先輩の子供じゃないですかぁ!
 例えがヤバめなだけで、あながち解釈的には間違いではない。
 むしろ恋する乙女はこういう風に変換したほうが理解しやすいのだ(多分)。

「じゃあせとかが常に萌実さんと一緒にいれば最強ね~」

「せとかのサポートもできるしね~」

「「いい子見つけたわね~。おめでとう~~」」

 きゃっきゃっとはしゃぐ双子に、萌実は舞い上がったが、ふとせとかを見て不安になる。
 当のせとかは微妙な顔だ。

 そういえば、せとかに彼女はいないが、好きな人がいないと確かめたわけではない。
 サポートメンバーに萌実は最適だが、他に好きな人がいる場合は微妙なのではないか?
 今からその人に告白しようにも、部活で萌実とべったりしていたら、高校生カップルなどあっという間におしまいだ。

---そりゃ先輩が誰かと付き合うところは見たくないし、別れたら私にもチャンスがあると考えることもできるけど。でも、私のせいで恋愛が上手くいかないっていうのは、あんまりよろしくないことだよね……---

 せとかを他の人に取られたくない気持ちはあるが、自分のせいで不幸になるのはいたたまれない。

---複雑だなぁ---

 せとかの心の内がさっぱりわからないだけに、ちょっとした言動に一喜一憂してしまう。
 それが片想いの醍醐味といえばそうなのだろうが、普通の高校生活でないだけに、事情が違う。
 ここでせとかも嬉しそうだったら、萌実も素直に喜べるのだが、先のせとかの微妙な表情を見てしまうと、せとか的にはあまり嬉しくない状況なのかもしれない。

「とりあえず、お互い力を上手くコントロールできるよう、練習を重ねていきましょう」

 せとかはそう言って、もう一度萌実の顔の前に手を翳した。
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