結構な腕前で!
第六章
 それからは道場解放日の間に、力のコントロールの練習日を設けるようになった。
 初めは解放日の二日後、まだ魔があまり集まっていない状態のときから開始し、だんだん慣れてくると徐々に日にちを遅くする。
 解放日から日が経つほど魔が多くなり、かつ凶暴になる。
 解放日から五日目で、萌実は根を上げそうになった。

「先輩! 無理ですよぅ、こんなの」

 道場の前に立っただけで、中の不穏な空気を感じる。

「大丈夫だよ。俺がいるから」

 せとみが爽やかに笑って言うが、こいつのこういう言葉は一切あてにならないことも十分身に染みた。
 いや、『いるから』という言葉に嘘はない。
 が、大丈夫かどうかは甚だ疑問だ。

 せとみは一旦戦闘モードに入ると、周りのことなど一切見ない。
 誰かを守りながら戦うことはしないのだ。
 何か自分が楽しんでいるように見える。

「力はあまり乱発しないほうがいいですので、出来る限り僕らも戦います。そっちのほうが、ストレス解消にもなりますし」

 そういう問題だろうか。
 とりあえず萌実も菓子きりを構えた。
 皆それぞれ己に合った茶道具を武器にしているが、素人はとりあえず『いかにも刃物』がいいと思ったので、萌実は菓子きりを選んだのだ。
 指の長さぐらいしかないのが難点だが。

「菓子きりも、いいものを買えばそれなりの長さがあるんですけどね」

 南京錠に鍵を差し込みながら、せとかが言う。

「でもいいものだったら、投げて使えないですし。なくなったら困るでしょう」

「はぁ、まぁそうですね」

「投げるのは難しいですけどね。礫などと違って、細いですから力の入れ具合が難しくて、上手く飛ばなかったりしますし。結構コツがいるんですよ。慣れないうちは、間近で斬るほうがいいでしょう」
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