結構な腕前で!
 つまり、いつも道場に一週間かけて魔を集めているのだが、前の力の放出で道場に穴を開けてしまった。
 当然穴が開いていたら魔が溜まることはない。

「あっそうか~。おびき寄せる餌もないものね」

「だから分散しちゃってるのね」

「「なぁんだ、そういうことか~」」

 あははは~っと笑う双子だが、せとかは、ぱし、と扇を鳴らした。

「笑い事じゃありません。ここまで魔が溢れるということは、餌の効力も落ちてるということではないですか?」

「「う……」」

「この部屋の周りの結界も弱まっているようです。はるか、道場解放がなくても餌は必要です」

「そ、そうだけど。私、今体調がよくないの。壺もなかなか作れないし」

 びし、とせとかに扇を突き付けられ、はるかがしどろもどろに言う。
 そろりと萌実は少しだけ下がって、はるみの袖を引っ張った。

「あの。何でせとか先輩は、はるか先輩を?」

「あのね、道場の餌とか結界とかは、私たちの仕事なの。私とはるかが代わりばんこにやるんだけど、次ははるかの番だったのね」

 ということは、はるかが仕事をさぼったということか。

「結構重労働なのよ。だから代わりばんこなの。二人でやって二人とも倒れちゃったら困るしね」

「え、そんなに?」

「一週間、魔をおびき寄せられる餌と、部屋の周りの結界。壺は空間を開かないといけないしね。まぁ壺は、別に順番はないんだけど。余裕のあるほうが作ってるし」

 そうだったのか。
 しかし餌って何だろう。
 知りたいような、知りたくないような。

「確かにここ数日、はるかの調子は良くなかったから、私もちょっと手伝ったんだけど、やっぱり足りなかったか。少々無理してでもやらないと、せとかが怖いのに」

 言いつつはるみは、じりじりと下がってせとかから距離を取る。
 ばし! とせとかが、扇で畳を打った。
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