結構な腕前で!
「全く、由々しき事態です」

 しゅんしゅんと湯の沸く音の響く茶室で、せとかが腕組みして言った。

「そうですよ! 先輩が学校で活躍するなんて!」

 思わず萌実が叫ぶ。
 が、深く考えることなく、せとかは眉間に皺を刻んだまま頷いた。

「校舎のほうまで魔が進出してしまうと、折角ここに部室を構えた意味がありません。おまけにこのままでは、せとみが学校で大暴れ。茶道部の品位を落としかねません」

 せとかだって結構人が変わると思うのだが。

「それにせとか先輩、目立っちゃってます!」

 魔が学校に出没するとか、はっきり言って萌実にはどうでもいい。
 日常的に部活で魔と対峙している身からすれば、それが部室か教室かの違いであって変わらないのだ。
 そんなことより、せとかが人気者になるほうが大問題である。

「う~ん、あまり目立ちたくはないですが。でも生徒を守るために、茶道部はあるわけですから」

 初耳である。
 いや魔の最前線に立たされているわけだから、薄々気付いていた。
 気付いてはいたが、それが茶道部ということで、一気に現実味がなくなっていたのだ。

「常に第一線で戦っているわけですから、それに応じて部費も莫大なんですよ。逆に言うと、役目を果たさないなら部は解体」

「そんなっ」

「折角逸材が入ってくれたのに、廃部は避けたい事態ですね」

 下心ありありの萌実とは違い、せとかはあくまで冷静だ。

「どーすんの、せとか」

「今日呼び出し食らってたじゃない~」

「「まさか廃部の通達じゃないでしょうね~~」」

 双子がきゃんきゃんと吠えていると、すらりと障子が開いた。

「ふー。ったく奴ら、段々攻撃的になってやがる。道場、早く直して欲しいのに、これじゃ日曜大工部の奴らが怖がって上がってこないぜ」

 制服姿のせとみが、疲れたように部室に入ってきた。
 そこで、ぽん、とせとかが手を叩いた。

「そうか。道場がないから、魔が溢れてるんだ」
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