超短編 『エキストラ』 2
「ユキエ、大丈夫?待っている時間が長いけど、楽なバイトでしょ」

ルリからだった。

「そうね、今丁度お昼食べてる。わりと美味しいよ、ロケ弁」

「そう、じゃあ、ヨロシクネ」


「午後の撮影に入りまーす」

ADの声で、再び撮影が始まった。


公園の外からヒロインを見つけた主人公が走ってくるシーン。

ユキエは、ベンチではなく公園から歩いて出ていくことになった。

途中で主人公とすれ違う。


もしかすると、テレビに映っちゃうかな。

ユキエは、少しワクワクしていた。



「用意、スタート」


ユキエは出口に向かって歩き始めた。

主人公が、走ってくる。

それをカメラが追っている。



と、その時大型ダンプがスピードを出して走ってきた。

ユキエは、ふと厭な予感がした。



主人公の若い役者は、撮影中なので夢中で走っている。

カメラマンも気づいていない。

他の誰もが撮影に気を取られている。


「危ない」

ユキエが叫んだ時は、遅かった。

瞬間的に目をつぶったユキエの耳に鈍い音が響いた。


ドーン。


そして、ユキエの足元で、ドサッ。


思わず目を開けたユキエが見たのは、血だらけで倒れている主人公役の役者。


その役者は目を見開き、血だらけの手でユキエの足を掴んで言った。

「痛いよ・・・」

ユキエは気を失って、倒れた。



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