初恋のキミは最愛ヒーロー
「あそこの角を曲がった先の空き地です。お巡りさんたち、早く早く!!」
続いて、急かすような男の声も聞こえてくる。
今の声も普段からよく聞いてるような…。
「ヤバい、警察官が来るぞ。こんなところ見られたらマズいだろ」
「おい、逃げようぜ!!」
男たちは慌てて空き地から出て行く。
紅月に、ユウキ、ケイタと呼ばれていた男たちも、そそくさと逃げて行ってしまった。
ったく、自分たちで持って来たものは、ちゃんと持ち帰れよ…。
曲がった鉄パイプを見つめながら溜め息を零していると…
「壱夜くんっ!」
さっきも聞こえた女の声。
視線を向ければ、空き地に入ってくる碧瀬と桃舞の姿が映った。
「お前ら…」
ということは、もう一人の男の声は桃舞だったのか。
駆け寄ってきた碧瀬は、心配そうに瞳を揺らした。
「壱夜くん、ケガしてない?大丈夫?」
「ああ、どこもケガしてない。それより警察官は?」
「えっと、さっきのは…お芝居なの」
「は!?芝居?」
気まずそうに頷く碧瀬に、瞬きを繰り返した。