【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
梨田を睨んで、芽衣は自分の腕を掴む梨田の手を振り払った。

周りにいた客も店員も芽衣と梨田に注目していた。
最悪だわ。紹介相手がこんな男だなんて。

レストランの扉を押し開けまた駅に向かい歩き出す芽衣。

「なあ、そんなに怒るなよ。俺はさ紹介ってのが嫌になっただけでさ、あんたが嫌なわけじゃないから」
後ろからついてきながら、梨田が勝手に話してくる。

「……」

何もききたくない。
嘘ばっかりのチャラ男の話なんか聞く必要はない。

芽衣は無視してズンズン歩いた。

「本気で恋愛を始めるならさ、紹介からじゃ無理だと思って。少しでも自然な流れで、あんたに近づきたかったんだ」

本気で恋愛?自然な流れ?
ナンパみたいな話しかけ方が、この人は自然だと思っているのだろうか。

モテ男の言うことだ。どうせ適当に後付けした理由に違いない。

「店の扉を開けて、あんたが俺の名前を口にしたとき、正直…嬉しかったんだから」

嬉しかった?

芽衣は、くるりと男の方へ向いた。

「嬉しかったですって? そんなチャラい台詞を私が本気にするとでも?」

「チャラいと思われるのは、心外だ。真面目に言ってんのにな」

「また、嘘ね。軟派過ぎるわ」
呆れ返り芽衣はため息をもらした。

「見た目で人を判断するなよ。外人顔だから遊んでそうとかモテるだろうとかさ。全然そんな偏見外れてるから。それより」

近づいてきた梨田は、芽衣の顔の前に自分の顔をヌッと出した。

「あんたさ、俺の顔を覚えてない?」



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