【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
こんな男に知り合いは、1人もいないはずだ。派手な顔だ。こんなインパクトがある顔を一度みたら普通は忘れる訳がない。メガネでもかけていれば別だが。
メガネ……。
「あっ!まさかっ」
芽衣は目をパチパチさせて、梨田をしっかり見つめた。
「ようやく思い出してくれたんだ? 田中 芽衣さん」
ニッと白い歯を覗かせて笑って見せた梨田。
この展開は、そう。やたら子供の頃に出会っていたりする韓国ドラマに良くある運命的な出会いだろうか。
だとすると、このモテ男と子供の頃に出会っているのか、私。
芽衣は、右手の指先で顎をタップしながら頭の中の記憶を呼び覚まそうと努力し始めた。
「うん、わかった! たぶん、小学校の時に同じ学年だったよね? たしか度の強い大きなメガネかけてた…」
過去の自分の記憶の中にたしかに存在しているメガネの青白い男の子を芽衣は思い出していた。
「確か名前が…安西くん?安西…とし…ごめんなさい。下の名前が定かじゃないわ」
すまなそうな顔を梨田に見せる芽衣。
「いやいや…誰だよ。安西って。俺の名前すっかり忘れてるだろ?俺の名前は梨田大和。全然違うよな?」
梨田は、自分の顔を指差してみせる。
「ああ…なんだ。違うのね…じゃあ、あとメガネかけてた人なんていたかなぁ」
ひたすらメガネ男子の記憶を掘り起こそうとする芽衣。
他にメガネをかけていた男の子なんていたっけ。
芽衣は近くのビルをぼうっと眺めるでもなく見上げた。