【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「お客様、何かお飲物でもお持ちいたしましょうか?」
よほど暇なのだろうか?
まだ、10分くらいしか経っていないのに又、モテ男が現れたのだ。
「はぁ」
姿勢を直して周りを眺める芽衣。
店内はディナータイムのせいか席は、ほとんど埋まっている。
「こちらがドリンクのリストでございます」
「はあ…」
ドリンクのメニューをざっと眺めて芽衣は顔を上げた。
笑顔が憎たらしいくらいにモデルじみた男だ。それに負けじと芽衣も笑顔を作ってみせた。
「おかまいなく」
「はぃ?」
「連れがくるまで待ちます」
芽衣はメニューを閉じて男へ差し出した。
受け取ってから納得しかねるような感じではあるが男は、ようやく引き下がるような返事をした。
「はあ……かしこまりました」
頭を下げテーブルから離れかけた男を芽衣は呼び止める。
「あの」
「はぃ?」
「他にお客様を対応するのに忙しいでしょうから、連れがくるまで私には、どうかおかまいなく」
「……はい、かしこまりました」
礼をして離れていく男の背中を芽衣は満足して見送った。
これで店員とのやり取りの煩わしさから少しの間、開放されるだろう。
芽衣は深く腰かけ窓の外を眺めた。