【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
それにしても来ないなぁ。
そうだ、真知子へ連絡して梨田さんの電話番号を教えて貰おう。今夜、梨田さんが忙しいようなら、又、別の機会に変えてもらってもいい。
20分ほど待っていた芽衣は、バッグからスマホを取り出した。
真知子へラインをしようと文字を入力し始めた時、
「お客様、梨田様から電話がありました」
芽衣はスマホをテーブルに置いて顔を上げた。
モテ男が立っていて芽衣を見おろしている。
「伝言がございます。お伝えしても?」
ため息をついて、芽衣は眉間に皺を寄せた。
「はい、もちろん」
「今夜は行けなくなってしまったので申し訳ありません。宜しければディナーを楽しんでからおかえりください…との事です」
「そうですか。それなら」
芽衣はスマホとバッグを掴んで椅子から立ち上がろうとした。
そんな芽衣の肩を掴んで
「慌てないで座ってください」といい、男は芽衣を座らせる。
「あの、連れが来ないのなら帰ります」
「…帰っちゃうの?」
何だろう。
この気だるいムードで甘い感じの言葉使い。
恐らく年齢はさほど変わらない感じだ。だが、常連でもない人に対して、あまりにもフレンドリーすぎやしないだろうか?
余裕の笑みを浮かべた男。
男は、何故か断りもなく芽衣の向かいにちゃっかり座ってしまった。