散歩道
『えっ…?』

私は始め、自分がそう言われたのだと思った。
けれど、顔を上げると誠也さんの視線はこっちになくて、今までしゃべっていた2年生の女子へ向けられていた。


『ごめんねぇ』
そう言って誠也さんは、その人たちを帰した。


『それで。君はどうしたの?麻里ちゃんっ♪』

誠也さんは、なんだか私の気持ちを知っているような口調で言った。


『べっ…別に、用はないんですけど…』

『用もないのに、話しかけたのぉ?』


にこにこして言う、誠也さん。



『だって…』

急に恥ずかしくなってきた。
誠也さんに私の気持ちが見透かされているみたいで。


『もしかして…やきもち?』

ほら。
そうやって意地悪そうに笑ってさ。
本当は全部わかってるんだ。


『ちっ……違いますよ…』

語尾が弱々しい。
だって違わないのだから。


『でも困るなぁ。俺はみんなのものなのにっ♪』

そう言う誠也さんは、どこか楽しそうだ。



からかわれているのに。
それさえも嬉しく思う私は、おかしいのかな?
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