妹の恋人[完]
「・・・お父さんもさー。どうしてもっと早く教えてくれなかったかなぁ」

弟はかわいいけど、それを隠していたことがどうしても許せなくて。

お母さんと別れる前から、新しい奥さんの家によく行っていたんだという。

自分の父親ながら、そんなことが出来てしまう神経が信じられないと笑っていた。

でも、その笑顔はとても悲しそうで。

持っていたマグカップをバルコニーにあるテーブルに置き、そっとカヨちゃんの頬に手を伸ばしてみた。

頬に手が触れた瞬間、びくっと驚いて俺を見たカヨちゃんは、俺の手の上に自分の手を重ねてそっと目を閉じた。

「・・・弟は嫌いじゃないの。新しいお母さんも、とても素敵な人。でも、どうしても許せなくて」

頬に触れている俺の手に、小さなしずくが伝って。

すっと親指だけを動かして涙を拭うと、俯き気味に目を開けた。

「いつか、お父さんを許せる自分になりたい」

静かに見上げた俺の顔を、涙をためた瞳で見つめられて。

もう片方の手でカヨちゃんの頬を包み、そっと触れるだけの口づけをした。

「伝わっていると思うよ、その想いは」

頬を包んでいた手を背中にまわし、ぎゅっと力を込めてカヨちゃんを抱きしめると、Tシャツ越しに彼女の涙が伝わってきて。
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