妹の恋人[完]
目を合わせることなく、そう言った彼女は、俺に背を向けて玄関の方へとゆっくり歩きだした。

「カヨちゃん」

呼びかけに足を止めたけど、振り向くことはなくて。

ただ、足元を見つめて背中を向けている。

そんな彼女に、俺も近づくことはなくて。

「自分を、信じて。前に進もうね」

大切な家族を亡くし、俺に本当のことを告げた彼女。

俺も、前に進むために彼女と最後の別れをするべきなんだろうか。

「さようなら」

大学も止めるという彼女。きっともう、会うことはないと思う。

地元だって、そんなに離れているわけじゃないけど。

でも、きっとこれが最後。

最後まで彼女が振り向くことはなくて。

車に乗り込み、エンジンをかける。

ルームミラーから彼女の姿を確認すると、涙を流しながら俺を見ていて。

目があったけど、俺は振り返ることをせずにそのままゆっくりと車を走らせた。

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