妹の恋人[完]
倉庫から掃除用のモップを取り出し、高橋ワタルとは逆の方から掃除を始める。

いつもは一人でやっている掃除も、二人だとあっという間に終わりそうだ。

途中、俺たちの間が近くなってくると、くるっと方向を変えて掃除を止めた高橋ワタル。

モップを倉庫に片付けると、ボールをかごから出してふきはじめた。

そんなにまで避けられると、どうしても気になってしまうんだけど。

残りを一人で黙々とモップをかけて、そのモップを片付けると俺もボールを拭こうと高橋ワタルに近づく。

すると、手に持っていたボールを俺に向って投げ飛ばしてきた。

とっさにそれを受け取る。なんなんだ!?

「俺、なにかした!?」

なんだか納得できなくて、受け取ったボールを手にしたまま、高橋ワタルに近づく。

「俺はお前が嫌いだ」

面と向って嫌いだと言われたのは、生まれて初めてのことかもしれない。

一瞬何を言われたのか理解できなくて、ぽかん、としてしまった。

「俺は、お前が嫌い」

そんな立ち尽くしている俺に向って、改めて嫌いという高橋ワタル。

「なん・・・で?」

どうして?入学式の日、部室で初めて見た高橋ワタルは、俺の名前を知っていた。

でも、俺は彼のことを知らなくて。

なのに、なんで嫌いとまで言われなければならないんだろうか。
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