妹の恋人[完]
「浅野コウヘイ」

入口に立っている俺に気がついたの高橋ワタルが俺を見て、溜息を吐くように俺の名前を呼んだ。

「おはよう」

どうして俺が避けられているのかわからないけど、高橋ワタルはとにかく俺を避けていた。

こうして面と向かうのは実は初めてで、今までよく話す機会ができなかったものだと不思議なくらいで。

それくらい、毎日顔を見かけるくせに目すら合わせたことがなかったんだ。

「・・・おはよう」

持っていたボールをバスケットゴールにすっと投げいれ、ボールが跳ねる音が体育館に響く。

「今日は早いんだね。いつもは俺が一番だから、びっくりしたよ」

誰とでも仲良くなりたいわけじゃないけど、自分からけんかするのも面倒だし。

何もなかったかのように、ほかの部員と同じように普通に接してみる。

「・・・関係ないだろ」

ボールを拾い、かごに片付けると壁に立てかけてあったモップで体育館を掃除し始めた。

なんなんだ?何がそんなに気に入らないというんだろうか。
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