アレキサンドライトの姫君
ミーナは微笑んでそうエーデルに告げると、扉へと向かい内側に開いて低頭しながらその人物を招き入れた。
小声でエーデルが目覚めたことを伝えているのが聞こえる。

「ミーナ。君は下がりなさい。エーデルと二人にさせてくれ」

あの声がミーナへそう命じると、

「はいっ、わかりました」

どこか弾んだ声のミーナがエーデルに意味ありげに目配せをしてから部屋を後にした。
扉が閉まるのを確認してから、彼がこちらへと近づいてくる気配がする。
緊張なのか、羞恥なのか、自分でもよくわからない感情が込み上げて視線を自分の手元へ落とした。
近づいてくる足音よりも遥かに速い鼓動がうるさくて、どうしたらいいのかわからない。
気付けば、自分はまだ寝衣のままで髪も下ろされ化粧も施していない。
純白の絹のゆったりとした寝衣にはフリルやレースがあしらわれており、それだけでとても美しいものである。これにローブを羽織れば幾分羞恥も減るかもしれない。
鎖骨が見えるほど大きく開いた胸元もドレスを着用する際には気にならないものの、下着をつけていないこの寝衣に限ってはただ恥ずかしいだけ。
しかも、ドレスのような裏地もなく張りもないとろりとした質感の絹はエーデルの豊かな胸のラインを正直に描き出している。
こんな姿で彼に会うのが厭われてももう遅い。
ふとエーデルに人影が落ちる。

「エーデル…」

名を呼ばれても顔を上げることができない。
ーーー私は、どうしたら……。
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