Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
私は手ぬぐいを横に折って細長くしたものを夕緋の目に巻き付けた。
目の前で手をパタパタと振って、前が見えていないことをしっかりと確認する。

大丈夫だとわかったところで、服を脱ぎ、バスタオルで胸元まで隠して、恐る恐るバスタブに足を入れた。
足先が湯に沈んだ途端、心地のいい温かさに包まれる。
設定温度はひと肌よりやや温かい程度。いつまでも浸かっていられる温度だった。

夕緋の真正面に身体を沈める。ちゃぷんという音と水の流れで、私が浸かったことがわかったみたいだ、夕緋が目隠しをしたままにっこりと微笑む。

「もう、これとってもいい?」

「だめです」

「いつまで着けてればいいの?」」

「私が上がるまでです」

「……俺はこの状況をどうやって楽しめばいい?」

「香りで楽しんでください」

「……確かにいい香りはするけどさ」

夕緋は若干寂しそうに、手に花びらを掬い上げて香りを嗅いだ。

だって、これ以上は無理だ。彼の上半身を見ているだけで恥ずかしくてのぼせてしまいそうなのに。
服を着ると細く見えるのに、脱ぐとどうしてこんなに男らしく見えてしまうのだろう。男性特有の筋肉の曲線が私の平常心をめちゃくちゃに攻撃してくる。

「じゃあせめて、手ぐらいいいだろう?」

そう言って手を伸ばしてきたから、渋々その手を取ると――

「隙あり」

「きゃああっ」

私の身体を無理やり引き寄せて自分の正面に置き、膝の間に座らせた。
< 245 / 249 >

この作品をシェア

pagetop