Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
ほぼ無意識と言ってもいい。自分の手のひらの痛みにむしろ驚いてしまったくらいだ。

御堂さんは、打ち付けられた頬をそのままにして、呆然と伏せる。
けれど、私の心はそれでも収まりがつかず――

「うそつき」

思わず出た声は震えていて、しまったと思った。
これじゃあまるで私が、傷ついているみたいじゃないか。

御堂さんに愛する人がいたって、知ったことではないし、ましてや結婚なんて関係ない。
ショックなんて、受けるはずがない。受けているとしたら、それは錯覚だ。この場の空気にあてられているだけだ。

早く冷静にならなきゃ。いつもの自分に戻らなきゃ。
私はお姫様なんかじゃない。彼は私の王子様じゃない。

……けれど。自分を取り戻そうとすればするほど。彼の言葉が、仕草が、ひとつひとつ思い起こされて――。
あのとろけるような笑顔、あれも全部、嘘だったというのか。

全部……全部……

御堂さんと千里さんの熱い抱擁が頭をよぎり、瞳の奥から感情があふれそうになってしまう。
息が苦しい。
悲しくなんかないはずなのに、泣きたくなった。
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